生前贈与について

最近の金融機関は

最近、「暦年贈与サポート信託」など、各金融機関がこぞって、相続税を節税する手段の一つとして贈与をうまく使おうとする動きがみられます。
国の考え方自体が、国民が生きているうちに“いかにお金を使わせるか”にシフトしている以上、金融機関としては、この低金利時代を生き抜くための商品として目を付けたのでしょう。

暦年贈与とは

そこで真っ先に取り上げられているのが、暦年贈与です。暦年贈与とは、受贈者(もらう人)1人当たりの毎年1月1日から12月31日までの1年間(暦年)の贈与額が110万円以下である場合に、贈与税がかからない贈与方法です。
しかし「毎年少しづつ贈与すれば贈与税はかからない」とはいっても、毎年一定の金額を贈与することがあらかじめ決まっている(みなされる)なら、暦年贈与とは認められず、その全期間の贈与合計額がその決めた年の贈与税の課税対象になってしまいます。

認知症になったら

“あらかじめ決まっているかどうか”という主観的意思も含まれるものを根拠としていることから、客観的判断はある意味玉虫色にならざるを得ません。間違っても暦年贈与ではないと国税職員に指摘されないように、税理士の先生方はいろいろなご指導なさっておられます。ここでは詳しく述べることはしませんが、そのこと以外で今一つみなさまが心配に思うのは、自分が認知症になったらこの贈与はいったいどうなるかでしょう。

判断能力があるうちに

確かに自分の判断能力が衰え、親族に財産を贈与することが理解できない状態では贈与そのものができません。金融機関では贈与契約を書面で取り交わすよう指導されているように、少なくともこの契約書に署名と押印ができないようでは無理なのです。では、判断能力のあるうちにあらかじめ任意後見契約を結び、その契約で任意後見人に贈与する権限を与えておけばよいのでは?と理屈上はいえますが、もともと、国税職員は“いかに多くの税金をとるか”で価値判断を行っている以上、たとえ裁判所が、本人ではなく任意後見人の贈与を認めたとしても、国税職員がそれを暦年贈与と認める可能性は低いでしょう。相続開始前3年以内の贈与であれば、贈与財産の贈与時の時価を相続時にプラスして相続税を計算することになりますので結果的にはあまり関係がないかもしれませんが、それより前、例えば贈与税の除斥期間の6年前以降なら、全額ある一年の贈与税の対象として計算することも考えられなくはありません。暦年贈与を使うに際しては、あくまで自分に判断能力があるうちだけと考えた方がよさそうです。どうしてもというなら家族信託で贈与と同じ効果をもたせることもできますが、同じく相続税対策にはならないでしょう。

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