自筆証書遺言保管制度の盲点について

2022年6月22日

2021.4.25投稿「公正証書遺言と自筆証書遺言との違い」で、病気などにより体力的に長時間公証人と面談することが不可能な場合は、是が非でも公正証書遺言ではなく、あえて自筆証書遺言にして、内容を行政書士などの専門家に確認してもらうことにすることにより、少なくともその遺言書が無効となることは防げますと書きました。それはその通りなのですが、では同じ自筆証書遺言にするなら自筆証書遺言保管制度も利用できないか、そうすれば信用度も上がるのではないかと考えた方もおられたのではないでしょうか。実は、それはノーなのです。

自筆証書遺言保管制度は、遺言者が自ら法務局に出向いて保管の申請をすることを前提として成り立っています。公正証書遺言のように公証人に出向いてもらうようなことを法務局に求めることはできません。したがって、施設や病院に入所、入院している方や足腰の不自由で外出できない方は事実上この申請ができないのです。

また、保管制度を利用すれば時間と手間のかかる検認が不要といっても、遺言を執行する場合には、遺言書情報証明書の交付を法務局に申請しなければなりません。そして、この遺言書情報証明書の交付請求に際しては、1.遺言者を被相続人とする法定相続情報一覧表又は遺言者の出生時からの戸籍等のほか、相続開始の時における遺言者の全ての相続人の戸籍謄本等、2.相続人の住所を証明する書類で官公署の作成したもの等の添付書類が必要となります。これらの書類を整えるのに一定の時間がかかるため、検認を必要とした時に比べて迅速に執行できるとは限らないということになります。

このように、自筆証書遺言保管制度ができて公正証書遺言の必要性がなくなるということはありません。どちらも並立して存在し得るものであることを心にとめておきましょう。