自筆証書遺言が無効とされないための工夫について

2023年2月25日

自筆証書遺言で怖いのは遺言が「無効」だといわれることです。

自筆証書遺言には、形式などの不備はなかった場合でも、以下のような理由で無効を申し立てられる場合が想定されます。 1.被相続人が書いた字ではない。 2.遺言作成時、遺言書を書く意思能力はなかったはずだ。

「被相続人が書いた字ではない。」といわれた場合

被相続人が生前(できれば遺言作成近時)に書いたものが必要になります。被相続人から送られてきた手紙・ハガキには消印もありますから、被相続人の書いた日も推定できて有用です。保険契約、銀行借り入れ等、銀行員等の面前で本人に記入を求められる書類があればそれも有効です。ただし、今やタブレット端末等への署名で済ませることが主流になり、その控えをもらえないこともあります。日頃から数個の自書の紙上の書類を集めておくことが大事です。情報の高度化が進む現在、例えば本人のスマホなどに手書き情報を本人しか知りえない情報とともに記録しておくなどで、紙上の自書と同様の効果が今後は認められていくと思われます。

「遺言作成時、遺言書を書く意思能力はなかったはずだ。」といわれた場合

病院での医療記録や、介護施設での介護記録が役立つことがありますが、本人の死後において相続人にそれを開示してくれるかはケースによって様々です。一番良いのは遺言を作成する前に主治医の診断を受け、長谷川式簡易知能評価スケールなどの認知症の検査を受けておくことでしょう。また、遺言作成時の本人の生活状況、家族とのかかわり方等の周辺状況も判断材料になりますから、本人自身が日常生活状況を日記に書き留めたり、同居家族などが本人の普段の生活の様子や会話をビデオ記録しておくなども証拠に役立ちます。

公正証書であれば

公正証書遺言は、公証人が公証役場において証人二人の前で、遺言書に遺言能力があったかどうかしっかりと判断し、形式などの不備をチェックしてから遺言を作成しますし、偽造の恐れもありません。証人二人が実は不適格な人だった場合以外(もちろん、確認はされますが)は、特異なケースを除いて、まずは遺言書の有効性の問題は残らないと思われます。

民法は「欠格事由」として規定しています。 1.未成年者、2.推定相続人(相続人の予定者)及び受遺者(財産をもらう人)並びに、これらの配偶者及び直系血族、3.公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人とされています。

まとめ

高齢者や特に判断能力が衰えている方が遺言書を作成する際には、細心の注意を払わなければ、トラブルを引き起こす危険性が高いです。ご自身に認知症の兆候が見られる場合には、主治医や専門家などと相談しつつ、ビデオで遺言作成風景を撮るなど、遺言書作成時にご自身の遺言能力がしっかりとあることを立証するための証拠を確保することが大切です。

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