遺産分割協議の前に知っておくべきこと

2023年8月24日

令和6年4月1日からの相続登記の申請義務化に伴い、「何年も前に死亡している故人の相続手続きをしていなかった物件があるがどうしたらよいか。」というご相談が増えています。今日は、遺産分割協議自体をされていない方々のご参考になる民法上の問題を取り上げてみます。

ご承知の通り、戦後の民法は数度の改正を重ね今日に至ります。ここで注意をすべきことは、各相続人の相続割合は遺産分割協議が行われた時点の民法ではなく、相続が発生した(開始した)時点の、つまり、被相続人が亡くなった日の属する民法の定めによるということです。以下、ダイジェスト風にまとめてみました。

平成13年7月1日(※判例解釈上であり、正式には平成25年9月5日)~現行

第一順位配偶者:1/2子:1/2
第二順位配偶者:2/3直系尊属:1/3
第三順位配偶者:3/4兄弟姉妹:1/4

直系尊属とは、父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族のことです。また、養父母も含まれます。叔父・叔母、配偶者の父母・祖父母は含まれません。

子のうち、嫡出子と非嫡出子の相続分が同等になりました。

嫡出子とは、法律上の婚姻関係のある風の間に生まれた子をいい、非嫡出子とは結婚していない男女の間に生まれた子のことをいいます。

昭和56年1月1日~平成13年6月30日

第一順位配偶者:1/2子:1/2
第二順位配偶者:2/3直系尊属:1/3
第三順位配偶者:3/4兄弟姉妹:1/4

配偶者の相続分が引き上げられました。

兄弟姉妹の代襲相続は「その子(甥・姪)」までに制限されました。つまり、兄弟姉妹については再代襲(甥の子・姪の子)は認められなくなりました。

被相続人が亡くなり、相続が発生するよりも前に死亡している場合などでは、その相続人の子どもや孫が代わりに相続人となります。これを代襲相続といいます。相続人の子も相続発生前に死亡しているのであれば再代襲として相続人の孫が相続することが認められています。

昭和37年7月1日~昭和55年12月31日

第一順位配偶者:1/3子:2/3
第二順位配偶者:1/2直系尊属:1/2
第三順位配偶者:2/3兄弟姉妹:1/3

子のうち、非嫡出子は嫡出子の1/2になります。

第1順位の相続人が子と定められましたが、それは孫以下の直系卑属には固有の相続権がないことを明記したかっただけで、相続人の特定にあたって、結果は変わりません。

昭和23年1月1日~昭和37年6月30日

第一順位配偶者:1/3直系卑属:2/3
第二順位配偶者:1/2直系尊属:1/2
第三順位配偶者:2/3兄弟姉妹:1/3

直系卑属とは、子・孫など自分より後の世代で、直通する系統の親族のことです。また、養子も含まれます。兄弟・姉妹、甥・姪、子の配偶者は含まれません。再婚相手の連れ子は養子縁組をしていない場合は含まれません。

兄弟姉妹の代襲相続が制限なく認められます。

兄弟姉妹について、父母の一報を同じくする兄弟姉妹(半血の兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(全血の兄弟姉妹)の相続の1/2になりました。

昭和22年5月3日~昭和22年12月31日(応急措置法施行中)

第一順位配偶者:1/3直系卑属:2/3
第二順位配偶者:1/2直系尊属:1/2
第三順位配偶者:2/3兄弟姉妹:1/3

家督相続制度が廃止されました。

兄弟姉妹については、代襲相続は認められませんでした。

また、兄弟姉妹については、半血の兄弟姉妹も、全血の兄弟姉妹と相続分は同じでした。

明治31年7月16日~昭和22年5月2日

戦前は「家制度」のもと、戸主の死亡や隠居などによって戸主の地位を相続した一人の家督相続人が、その地位とともに財産すべてを承継する「家督相続」が原則でした。戸主以外の人が死亡したときのみ「遺産相続」となりました。

第一順位直系卑属(非嫡出子の相続分は、嫡出子の1/2)
第二順位配偶者
第三順位直系尊属
第四順位戸主

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