任意後見契約の落とし穴
2023.7.10投稿「任意後見契約と信託契約について」において、任意後見契約の効力が発生するのは、『任意後見受任者などの申立人が、「自主的」に、家庭裁判所に対して後見人を監督する立場の任意後見監督人を選任してほしいという旨の申立てをし、任意後見監督人が選任された時から』という旨を書きました。これは、効力発生時期が契約締結時からズレることにより効果にタイムラグが生じるということ以上に、もっと深刻な問題を生じさせます。
もともと、任意後見契約を締結する際、本人の状態がまだ任意後見契約を開始するほどでないものの、すでに身体能力から判断能力にまで衰えが出始めていることが多いことから、任意後見受任者に目下の医療看護や財産管理に関する代理権を与える契約を別途締結することが一般的です。これが悪用されることがあるのです。
良からぬ受任者は、本人の判断能力が不十分になった後でも、家庭裁判所に任意後見監督人を選任してほしい旨の申立てをせず、裁判所のチェックが一切入らない財産管理等の委任契約を逆手に取って、そのまま財産を着服してしまう可能性があるのです。
誰を任意後見受任者にするかは、よくよく吟味する必要がありそうですね。