遺産分割協議後に発見された遺言の扱い
具体的に例を挙げてご説明します
・相続人A(例:長男)
・相続人B(例:二男)
・相続人ではないC(法定相続人以外の人、例:知人)
「○○に遺贈する」という内容の遺言書の場合
「遺贈」は、遺言によって遺言者の財産を受遺者(法定相続人だけでなく、法定相続人以外の人もなることができます)に与えることを指します。
「Cに全て遺贈する」…全部包括遺贈の場合
遺産分割協議は無効となり、遺言書が有効となります。
「Cに遺産全体のうち2分の1を遺贈する」…被相続人に対する割合的遺贈の場合
遺産分割協議は無効となり、Cを加えてABC3名で再度遺産分割協議が必要となります。
「Aに遺産全体のうち2分の1を遺贈する」…共同相続人に対する割合的遺贈の場合
遺産分割協議の内容と比較して遺言書の方がAに有利であれば遺言書が有効で、協議は無効となります。
「A(またはBまたはC)に自宅を遺贈する」…特定遺贈の場合
遺言書が有効となり、遺産分割協議は一部無効。自宅を除いた部分について再度分割協議が必要となります。
「○○に相続させる」という内容の遺言書の場合
「相続させる旨の遺言」とは、共同相続人のうちのある特定の相続人に対し、相続財産を、遺贈ではなく「相続させる」とする内容の遺言のことです。
「A(またはB)に相続させる」…全部相続させる遺言の場合
遺産分割協議は無効となり、遺言書が有効となります。
「A(またはB)に自宅を相続させる」…特定の資産を相続させる遺言の場合
遺言書が有効となり、遺産分割協議は一部無効。自宅を除いた部分について再度分割協議が必要となります。
概ね遺言書が優先になりますが…
このように概ね遺言書が優先するという形になります。したがって、発見された遺言書が法的に有効か否かを確認することが重要になります。慌てて開封せず、先ずは裁判所にて検認を受けましょう。
なお、遺言書の内容を理解承諾したうえで、相続人全員がすでにした遺産分割協議の内容をそのまま維持することは有効と解されています。ただし、遺言執行者がすでにいる場合には、相続人の合意だけでは足らず遺言執行者の承諾が必要となります。
もちろん、相続人中の1人、または遺言書の内容で財産をもらい受けることになっていた相続人以外の者(受遺者)から、クレームが出れば、法律通りに処理せざるを得ず、再度の遺産分割協議等を余儀なくされます。