相続放棄について

2023年2月25日

相続放棄の概略

相続放棄は、文字通りプラス財産もマイナス財産も放棄するということです。相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に家庭裁判所に申し立てをすることで可能になります。具体的には相続放棄申述書を家庭裁判所に提出することで審査が行われ、問題がなければ正式に認められます。そして、相続の放棄をした者は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされます。また、相続の放棄は代襲相続原因になりません。つまり、相続の放棄をしても子や孫に相続権が移るということはありません。

初めから相続人とならなかったことについて

相続放棄は、放棄した人が単に相続(遺産相続協議)から抜けるという意味ではありません。例えば、配偶者と子3名がいる家族を想定した場合、子3人の全員が相続放棄をしたからといって配偶者がすべての遺産を相続できるということではありません。子は相続第1順位ですから、相続第2順位の直系尊属以降に相続権が移ります。つまり、親・祖父母に相続権が移ります。親・祖父母がいなければ第3順位の兄弟姉妹という具合になります。

3カ月以内ということについて

一度相続放棄の申述をし、家庭裁判所に受理されたら相続放棄を撤回することはできませんので、多額の財産が出てきても相続することはできません。そこで、相続開始を知ってから、つまり被相続人の死亡の事実を知り、それによって自分が相続人になったことを知った時から3カ月という熟慮期間があります。相続人を含む利害関係人または検察官がこの熟慮期間内に家庭裁判所に請求することで、熟慮期間自体を伸長させることはできますが、それで本当に十分かといえばはなはだ疑問です。この規定を厳格に解釈すると、相続人にとって過酷な結果となる場合もでてきます。そこで、被相続人の相続財産を知らないことにつき相続人に相当の理由がある場合については、その相続財産(ことに、債務)を知った時から起算すると解釈されています。また、熟慮期間の具体的起算点に関し判例では、「訴訟送達時」(東京高裁決定昭和63年1月25日)、「債権者からの通知」(広島高裁決定昭和63年10月28日)、「債権者からの催告書の送付」(東京高裁決定平成12年12月7日)とする下級審があります。

まとめ

遠い親戚や音信不通となっていた兄弟姉妹の遺産を引き継ぐことになった場合、親の死後1年以上もたってから債権者から連絡があった場合など、その対処に苦慮するケースが多々あります。裁判所も法律の適用をある程度柔軟に解釈してくれる場合もありますので、一度専門家に相談することをお薦めします。

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