家族(民事)信託のデメリットについて
先日、NHKの夜9時のニュースで「家族信託」が扱われました。家族信託とは、資産を持つ方が、特定の目的(例えば「自分の老後の生活・介護等に必要な資金の管理及び給付」等)に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。民事信託とよく似た制度に成年後見制度がありますが、そこでは、第三者の成年後見人に報酬の支払いが発生しますので、煩雑な申請手続きとともに、報酬の発生を回避できるということで焦点が当てられたようです。
確かに、親が自宅などの居住用不動産を保有しているが預貯金は十分ではない場合で、将来的に施設への入所を考えている場合に家族信託を行うことで療養費の問題を解決することができるのはその通りです。例えば、子が離れて生活しており、今後も親が保有する不動産に居住する予定がない場合、子が受託者として親の不動産の売却を行い、療養費を捻出したい場合などに家族信託を利用する場合があります。
ただし、家族信託は本人の財産管理のみが信託という形で可能になるだけで、身上監護は認められていません。つまり、日々の生活において発生する契約を行ったり、それこそ施設に入所、退所したりする手続きを本人に代わって行ったりすることはできません。本人の意思能力があるうちに信託契約の締結が必要であることとともに、これが大きなデメリットといえるでしょう。